価格調査ツールのプライスサーチ 独占禁止法とは?価格調整はどこまでOK?

増加し続けるEC市場規模

経済産業省によると、平成10年の調査開始以降、国内のEC市場規模は年々拡大を続け、平成29年は16.5兆円(前年15.1兆円、前年比9.1%増)に拡大しており、特にこの5年間では73.5%拡大しています。

経済産業省HPより引用

また、公正取引委員会の調査に対し、小売御者の内94%が「オンライン販売によるメリットがある」、77%が「オンライン販売により競争が激化した」と回答しています。今後もEC市場の拡大および競争の激化は継続するでしょう。

様々な課題

EC市場規模の拡大に比例して、EC事業者同士の価格競争も激化しています。健全な競争は経済を発展させます。しかし一歩間違えると過剰な値崩れを引き起こすことにもなります。

その際に引き起こる課題として次のようなものが考えられます。

小売業の課題

  • 安くないと売れないので利益が減る

メーカーの課題

  • 製品のライフサイクルが短くなる
  • ブランド価値が低下する
  • 卸先から値下げ交渉が入り利益が取れなくなる
  • リベート要求が激しくなる

また小売業やメーカーといった売り手側の利益が下がり続けることで、
消費者へ良い商品を届けづらくなるリスクもでてきます。

現状、競争の維持については独占禁止法で守られていますが、競争により引き起こされる課題についても考えていく必要があります。

独占禁止法について

そもそもどんな法律?

事業者間の競争を維持することで経済の発展を図る法律です。

事業者がより高品質、低価格の製品を販売しようと競争すれば、消費者は自分のニーズにあった商品を購入できます。すると、事業者は消費者に選んでもらうためにさらにより良い製品を販売しようと競争し、消費者の選択肢が広がる…というサイクルが発生し、経済の発展へと繋がっていきます。

事業者、消費者のサイクルにより経済発展へ

そのため、事業者間の競争を不当に阻害してしまうような要因は独占禁止法の規制対象となります。

価格調整は独占禁止法に違反する?

前述のように、事業者が市場の状況に応じて販売価格を自主的に決定することによって事業者間の競争と消費者の選択肢が確保されると考えられており、メーカーが流通業者の再販売価格を拘束してしまうと、流通業者間の価格競争を不当に減少、消滅させることから違法となってしまいます。

そのため、販売価格の「拘束」に当たることは原則として違法です。逆に言えば「拘束」に当たらないことは違法ではありませんし、「拘束」に当たるようなことでも事業者間の競争を促進するようなもの、消費者の利益になるようなものであれば容認される可能性があります。

再販売価格の拘束と判断されてしまうこと

それでは、どのようなことが再販売価格の拘束と判断されてしまうのでしょうか?

拘束は直接的な拘束と間接的な拘束の2種類に分けられます。
直接的な拘束とは、この価格で販売せよ、と取り決めてしまうことです。
具体的に言えば、

  • 価格調整に従うことを文書や口頭による契約で定めること
  • 価格調整に従うことへの同意書を提出させること
  • 価格調整に従うことを取引の条件とすること
  • 売れ残った商品を値引き販売させずに買い戻すことを取引の条件とすること

などが挙げられます。要するに、メーカーが示した価格で販売するようにさせる取り決めは原則としてアウトです。

間接的な拘束とは、価格調整に従わない場合に、経済的不利益を課す、あるいは課すことを示唆する等、何らかの人為的手段により価格調整に従わせることです。
経済的不利益とは、

  • 出荷量の削減
  • 出荷価格の引き上げ
  • リベートの削減

などが挙げられます。
もちろん、これの裏返しで、価格調整に従う場合に出荷価格を引き下げたり、リベートを増大させる等して利益を与えるようなことも違法となります。

直接的拘束の例 間接的拘束の例
文書や口頭による取り決め 出荷量の削減
同意書の提出強制 出荷価格の引き上げ
価格調整に従うことを取引の条件にする リベートの削減
買い戻しを取引の条件にする リベートの供与

上記に無いような事例であっても、流通業者がメーカーの指定する価格で販売することについての実効性が確保されていれば、原則として違法となります。

価格の設定方法について

「〇〇円で売れ」ではなく「だいたいこのくらいで売れ」と言えば、明確に価格を指示して拘束している訳ではないので独禁法に違反しないのでは?と考える方もいるかもしれません。しかしながら、公正取引委員会が作成したガイドラインはそのあたりも抜け目なく規制しています。

  • 希望小売価格の◯%以内の価格
  • 〇〇円〜〇〇円
  • 事前に承認を得た価格
  • 近隣店の価格を下回らない価格
  • 下限を下回った際に警告する等、暗に示す価格

なども販売価格の拘束と捉えられる類型として公正取引委員会が公表するガイドラインに挙げられているため、価格に関する表現がいかなるものであっても関係ないと考えるべきでしょう。

販売価格の拘束と判断された事例

やってはいけないことがわかったところで、実際に販売価格の拘束が行われていると公正取引委員会に判断されてしまった事例を見てみましょう。

アウトドア用品大手メーカーのA社は、平成28年6月、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令を受けました。

その内容とは、A社は小売業者が翌シーズンに販売を行う際や、新規業者と取引を開始する際に、以下の販売ルールを定め、従わせていました。

  • 販売価格はA社が定める下限以上
  • 割引販売は他社の商品も対象にする、または実店舗における在庫処分を目的とする場合にのみ、A社が指定する日以降、チラシ広告を入れずに実施する場合のみ可

販売価格の下限を設定し、それに従わなければ契約を結べないという経済的不利益が示唆されており、これは明らかに販売価格の拘束です。

独占禁止法で禁止されていないこと

やってはいけないことを概観し終わった上で、やっていいことなんてあるのか?価格調整なんて不可能ではないか?と感じるかもしれませんが、あくまで「拘束」することが禁止されており「拘束」にあたらないことは禁止されていません。

例えば、「参考価格」「メーカー小売希望価格」などの文言で販売してほしい価格を通知すること。
あくまで価格を決めるのは流通業者や小売業者であり、強制するつもりはないがメーカーとしてはこのくらいの値段で売りたい、と言う旨を通知すること、すなわち価格調整をお願いすること自体は問題にはなりません。


流通価格を調査することも違法ではなく、公正取引委員会が公表するガイドライン上でも「事業者が単に自社の商品を取り扱う流通業者の実際の販売価格、販売先等の調査(「流通調査」)を行うことは、当該事業者の示した価格で販売しない場合に当該流通業者に対して出荷停止等の経済上の不利益を課す、又は課す旨を通知・示唆する等の流通業者の販売価格に関する制限を伴うものでない限り、通常、問題とはならない。」と明記されています。

また、平成27年に導入された、「選択的流通」という制度があります。
メーカーが設定した一定基準を満たす流通業者に限定して商品を取り扱わせる場合、その流通業者に対し、取り扱いを認めていない他の流通業者への転売を禁止することができる、という制度です。


設定基準が品質の保持、適切な使用の確保など、消費者の利益を考えた際にそれなりの合理的な理由に基づくものと認められ、かつ、他の流通業者にも同じ基準が適用される場合は、特定の安売り業者が基準を満たさず商品を取扱えなくても問題ない、とされています。

これにより安売り業者による商品販売に制限を加えることが可能となりますが、消費者の利益のために全ての流通業者に共通の基準を導入した結果、安売り業者が商品を取り扱えなくなると言う順序が重要ということを意識しなければなりません。

消費者の利益ではなく、安売り業者が商品を取扱えなくなることを目的として基準を設定、適用したと捉えられると販売価格の拘束に該当してしまうので注意しましょう

選択的流通はメーカーによる流通業者の選択ですが、メーカーが小売業者を適切な販売方法のために選択、制限することも可能であり、「小売業者の販売方法に関する制限」と呼ばれます。例えば、対面販売が商品の適切な使用に必要不可欠な商品を、通信販売を行う小売業者への販売を禁止することなどが挙げられます。違法性基準は選択的流通とほぼ同じと考えてよく、消費者の利益を鑑みた合理的な理由と取引先全ての小売業者に対する制限基準の平等な適用が重要です。

独占禁止法で禁止されていないこと注意点
販売価格の通知指定価格で販売させることへの実効性が認められると違法
流通価格の調査調査結果を用いて価格拘束すると違法
選択的流通安売り業者排除が目的と判断されると違法
小売業者に販売方法に関する制限安売り業者排除が目的と判断されると違法

おわりに

販売価格を拘束することは原則として違法ですが、販売価格を通知するにとどめ、自主的な価格設定の権限が流通業者や小売業者にあれば基本的に問題ありません。
流通価格の調査や選択的流通も公正取引委員会が公表するガイドライン上問題ないと明記されているので課題対策として活用が見込めるでしょう。

※本記事は、再販売価格の拘束を促すものではございません。
※公正取引委員会が公表しているガイドライン及び独占禁止法を遵守いただくようお願いします。

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